事例インタビュー

公開日:2026/09/25

更新日:2026/9/25

ごかつら池どうぶつパーク様|「かけがえのない宝物」である支援者様と挑戦後も続く関係

READYFORサプリ編集部

三重県多気町にある「ごかつら池どうぶつパーク」は、1993年、「五桂池ふるさと村 花と動物ふれあい広場」として開園した小さな動物園です。施設の老朽化が進むなか、髙橋さんによれば、「なんとか存続してほしい」という地域の人たちの声が、園を残す支えになったといいます。約1年の工事を経て、2024年6月、「ごかつら池どうぶつパーク」としてリニューアルオープンしました。

2024年2月からこの園の運営を引き継いだのが、ごかつら池どうぶつパーク園長で、株式会社ウェバレッジ代表取締役の髙橋文彦さんです。髙橋さんが最初に決めたのは、資金の集め方ではありませんでした。来園者に親しまれていた自由なエサやりのルールを見直すこと。動物の健康管理を優先するための判断でした。一方で、変更に戸惑う声や厳しい意見も寄せられたといいます。

そのうえで挑んだクラウドファンディングは、2,861万2,000円もの資金を集めました。ただ、髙橋さんが「かけがえのない宝物」と呼ぶのは、集まった金額だけではありません。

資金難と老朽化を抱えながら、動物たちの環境をどう変えていくか。同じ問いの前に立つ園館や自治体の方に向けて、髙橋さんにうかがいました。



ごかつら池どうぶつパーク

三重県多気町にある小さな動物園。「動物ファースト」を掲げ、動物福祉を重視した飼育環境の整備を進めている。来園者とのふれあいを大切にしながら、動物の健康管理との両立を目指す。髙橋文彦さんが園長を務める。


実施されたクラウドファンディングプロジェクト

ごかつら池どうぶつパーク|命を守り、次世代へ繋ぐ小さな動物園の挑戦

・資金の使い道:未改修エリア・獣舎の改修など

・支援総額:28,612,000円(目標金額 10,000,000円)

・支援人数:1,092人

ごかつら池どうぶつパーク|命を守り、次世代へ繋ぐ小さな動物園の挑戦


目次

地域の思いを継ぐ、民間運営の覚悟

──ごかつら池どうぶつパークとは、どんな動物園でしょうか。

髙橋さん:私は横浜出身で、この業界に30年くらいいますが、三重県に動物園があることを最初は知らなかったです。「リニューアルオープンするのでアドバイスをくれないか」と声をかけていただいたのがきっかけでした。

実際に行ってみると、施設の老朽化が進んでいることを感じました。それでも長く地域に親しまれてきた施設で、「なんとか存続してほしい」という声がありました。僕は、地域の方たちの「残したい」という思いによってつながれてきた動物園だと感じています。

引き継ぐことになった時に、その「残したい」という思いをつなげていかなければいけないな、と。何か、ここに「呼ばれたのかな?!」という運命的なものを感じました。


リニューアルオープン時

リニューアルオープン時

──運営は指定管理というかたちになるのでしょうか。

髙橋さん:指定管理にもいろいろ方法があります。当園は、土地と建物は自治体の管理のものですが、運営はすべて民間企業が行うかたちです。多くの動物園の指定管理では「管理委託料」が支払われ、一定の運営費が確保されます。ただ当パークは、管理費をいただかず、民間企業の資金やノウハウを活用して運営するPFI事業という手法になります。

そうした仕組みの中でやるというのは、相当な勇気と覚悟がいりました。今までは雇用されている立場でしたが、今はすべて自分の判断になりますので、逃げる理由がなくなりました。

──お引き受けされて、まず考えたのはどんなことでしたか。

髙橋さん:いちばん考えたのは、「絶対にブレてはいけない軸は何か」ということでした。

以前人気だった動物たちはすでにいないし、残っていたのはウサギが300頭ほどで、広さに対して頭数が適正とは言えない状態でした。当時は、入園口で廃棄する前の野菜などを動物のエサとしてバケツで販売していて、来園者が自由にエサをあげられる仕組みがあり、それがいちばん人気の体験になっていました。

でも、エサやり体験は、動物の視点に立つと健康管理ができない状態でした。ふれあいは大事なのですべてをなくすわけではないのですが、制限をかけて、動物種を決めることにしました。、その結果、「楽しみにしていたエサやりがなくなってしまった」という厳しい声も寄せられました。

以前と同じ運営方法を引き継ぐこともできたのですが、それをすると何年か経った時にまた同じ問題にぶつかります。世界的には「アニマルウェルフェア(動物福祉)」が主流で、対応が遅れる園は厳しい立場に置かれる可能性があると思っています。小さな動物園は、なおさら対応していかないと生き残っていけません。

動物福祉をきちんと担保できる園にしていく。その一つの目標として、三重県内の動物園では、まだ加盟したことがなかった「日本動物園水族館協会(JAZA)」への加盟を目指しました。審査は厳しかったのですが、なんとかクリアして今があります。お客様の声と向き合いながら、これまでの運営方法を変えていくのは、今も現在進行形です。


ごかつら池どうぶつパーク全景

目標1,000万円を超えた二つの波

──資金調達の手段として、クラウドファンディングを選んだ背景を教えてください。

髙橋さん:2024年6月のリニューアルオープンの際に改修工事ができたのは、全エリアの半分だけでした。残りのエリアを自治体の予算だけで整備していくには、相当な時間がかかるという話になりました。

いちばんは、お客さまからの「公開エリアを広げてほしい」というご要望にお応えするためでした。ただ、建物を解体して新設すると莫大な費用がかかる。そこで、今ある建物を活かしながら、アニマルウェルフェアに適したかたちに自分たちで改修しようと決めました。

──どんな体制で臨み、目標金額はどのように決まりましたか。

髙橋さん:社内でプロジェクトチームをつくりました。現場の飼育スタッフが2人、事業推進が2人。それに私を含めた5人の体制で、READYFORのキュレーターさんとほぼ毎週打ち合わせをしながら準備を進めていきました。

打合せ時の様子

いちばん覚えているのが、最初に金額設定の打ち合わせをした時です。私としては「最低でも最初は2,000万円は調達したいです」とお伝えしたんです。でも、当時はまだ発信力や認知度が全然なかった。キュレーターさんからは、当時の発信力や認知度を踏まえると、第一目標金額500万円でもかなり大変な目標かもしれない、というお話がありました。

もちろん500万円でもありがたいのですが、代表としてのプライドもあって(笑)、「えっ、500万…?」となってしまって。なんとか最低でも1,000万円でスタートしたい、とお話しをしましたら担当キュレーターの方が、「私も覚悟を持って同じ船に乗らせていただくので、第一目標1,000万円で一緒に挑戦しましょう!」となりました。そこで初めて、「自分たちの認知度ってこれくらいなんだ」という厳しい現実を知ったのです。

──始まってからは、いかがでしたか。

髙橋さん:実際にスタートしてみると、最初は本当に支援がなかなか伸びなかったんです。キュレーターさんも「なんとか対策をしなければ」と感じていて、お互いにかなり焦っていました。

「やっぱり500万円がいっぱいいっぱいだったのかな」と諦めかけた時、キュレーターさんからのアドバイスもあって、私も「しっかり表に出て発信していかなければ」と腹を括りました。そうした発信を続ける中で、以前横浜で働いていた頃のつながりが復活し、大口の支援を寄せてくださる方がいらっしゃいました。それがきっかけになって、賛同の輪が広がり始めました。

ただ、その後また中だるみの時期に入りました。そこで今度は、日本全国の動物園・水族館の同業者からの支援が一気に増えました。知り合いの動物園関係者にお願いをしたところ、みなさん温かくご支援くださいました。それが第2の波になり、最終的には2,861万円まで到達しました。


第一目標1,000万円達成!

ただ、この期間中にいちばん大事にしていたのは、「支援金だけをゴールにはしない」ということでした。

支援者を「ファミリー」と呼ぶ理由

──支援者の方々は、どのような存在ですか。

髙橋さん:一言で「かけがえのない宝物」ですね。本当にそう思います。

前職は横浜のズーラシアという大きな動物園で働いていました。そこから今度は、人口約1万3,000人の町で動物園を引き受けることに。そのスタートのタイミングでクラウドファンディングを立ち上げました。

自分たちのプロジェクトにハートマークの「お気に入り」を押してくださる方が少し増えるだけでも、本当に嬉しかったです。最初はゼロに等しかったものが、だんだん増えて、その方たちが実際に支援という形でお金を託してくださる。だから、おこがましいかもしれませんが、「仲間」というか、本当に「ファミリー」に近い存在です。

──プロジェクトが終わったあとも、関係は続いていますか。

髙橋さん:達成した後も、たくさんの方が実際に園に遊びに来てくださっています。来て、見て、年間パスポートを購入していただき、何度もリピートしてくださる。

今はまさに、いただいたご支援金で非公開エリアの改修工事を進めている最中です。それを支援者の方々が「ここが新しくなっているんだな」と、現在進行形で一緒に見守りながら歩んでくださっている。そういう感覚があります。


リターンであるカラカルの飼育体験を実施

リターンであるカラカルの飼育体験を実施

──支援者の声は、スタッフの皆さんにも届いていましたか。

髙橋さん:はい、それがいちばん大きかったです。「自分たちが取り組んでいることは間違っていないんだ、よし、このまま進んでいこう」という強い勇気をもらえました。だんだんとスタッフ自身も「自分たちも発信したい」と、自主的に動いてくれるようになりました。

だからこそ、支援してくださった方々を絶対に裏切ってはいけないと強く思います。生き物を扱うお仕事なので、思い通りにいかないことや時間がかかることもありますが、とにかく「参加して本当に良かった」と思っていただきたい、そんな気持ちで取り組んでいます。

支援を地域へ、つながりを未来へ

──小さな園だからこそ生かせる強みは、どんなところにありますか。

髙橋さん:私たちの規模では巨額の予算や設備は持てませんが、その代わりに「スピード感」を持って物事を決定できます。スタッフが「これに挑戦したいんですけど」と相談がありましたら、その場で「いいね、やってみよう!」と実行力を発揮させます。失敗した時は、代表である私が責任を負う覚悟で常に動いています。

──これからいちばん大切にしたいのは、どんなことですか。

髙橋さん:忘れてはならないのは、第一に「動物ファースト」であること、そして私たちは「多気町という地域にある小さな動物園」だということです。

全国から多くの方に来ていただいて、たくさんのご支援が集まりました。それだけで終わってはいけないと思うんです。いちばん大切なのは、いただいたご支援を、しっかりと地域に還元していくこと。

この多気町で育った子どもたちが大人になって一度県外へ出ても、帰ってきた時に「やっぱりごかつら池どうぶつパークはいい場所だな」と感じて、今度は自分の子どもを連れて戻ってきてくれる。そんな世代をつなぐバトンとなる場所にしていきたいです。

出張動物園や出前講座の様子

──今回の挑戦を、一言で表すとしたら?

髙橋さん:もう一言で言うなら、やはり「つながり」ですね。キュレーターさんもそうですし、支援者の皆さんもそうです。同じ業界の運営者の方々とも新しいつながりができて、「ごかつら池どうぶつパークでこういう挑戦をしています。ぜひ広報支援をいただけませんか」と、大きな動物園を運営する方々にも直接お願いをすることができました。

──最後に、一歩を踏み出せずにいる園館の方々へ、メッセージをお願いします。

髙橋さん:地方の小さな園が単独で存続していく厳しさは、身に染みて感じています。ただ、勇気を出して一歩を踏み出すことで、想像もしなかった温かい「つながり」が生まれます。「力になりたい」と、全国の支援者や仲間が手を差し伸べてくださいます。

来園者の方々にも、動物たちの暮らし方や環境について、一緒に理解を深めていただけたらと思っています。「少し見えにくいかもしれないけれど、広々とした豊かな環境で、生き生きと暮らしている動物たちの本来の姿がそこにある」という価値を、これからも発信し続けていきたいです。

もし私で良ければ、私たちの経験をもとにしたアドバイスやお手伝いはいつでもさせていただきます。どうか一人で抱え込まずに、全国の仲間たちと一緒に進んでいきましょう。



カラカル

まとめ

取材を通して印象に残ったのは、髙橋さんが資金を集める前に、「絶対にブレてはいけない軸は何か」を決めていたことでした。

来園者に親しまれていた自由なエサやりのルールを見直し、動物福祉を優先する。そうして目指す園の姿を定めたうえで、未改修エリアを整備するためのクラウドファンディングに挑みました。

集まったのは、2,861万2,000円という資金だけではありません。支援をきっかけに、かつての仕事仲間とのつながりが復活し、全国の動物園・水族館関係者とも新たなつながりが生まれ、プロジェクト終了後も園を訪れ、変化を見守ってくれる人たちがいます。髙橋さんが支援者を「かけがえのない宝物」「ファミリー」と呼ぶ理由は、そうした関係の積み重ねにあるのでしょう。

そして、いただいた支援を園の中だけで終わらせず、多気町へ還元し、次の世代へつないでいく。髙橋さんの話から見えてきたのは、クラウドファンディングに挑む前に「何を大切にし続けるのか」を定めることの大切さでした。

人手や時間に余裕がないなかで、クラウドファンディングへの一歩をためらうこともあるかもしれません。そんなときは、髙橋さんの「一人で抱え込まずに」という言葉を思い出してみてください。まずは「何を守るために挑戦したいのか」「誰と力を合わせながら進めたいのか」を言葉にしてみてはいかがでしょうか。


READYFORサプリ編集部

READYFORサプリ編集部は、「みんなの想いを集め、社会を良くするお金の流れをつくる」ことを目指し、資金調達や寄付集めをサポートする情報を発信します。クラウドファンディングやファンドレイジング成功に向けたノウハウをお伝えする勉強会やセミナーも開催しています。実行者インタビューやプロジェクトの裏側を伝える記事などをはじめ、想いを形にし、資金調達を成功に導くための様々な情報をお届けします。

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