メンバーインタビュー

公開日:2026/10/02

更新日:2026/10/5

病院の魅力を引き出し、クラウドファンディングを財産として残す。現場で伴走するキュレーターの想いとは

READYFORサプリ編集部

READYFORでは、医療機関が実施するクラウドファンディングのサポート件数が累計300件を突破しました。患者さんやご家族、地域住民の方々など、これまで数多くの想いが支援というかたちになって、医療の現場へと届いてきました。

病院様がクラウドファンディングという新たな一歩を踏み出すとき、その想いに寄り添い、ゴールまでともに走り抜ける存在が、専任のサポート担当であるREADYFORの「キュレーター」です。

今回、病院様のサポートを重ねてきた3名のキュレーターが集結。クラウドファンディングを立ち上げる際の不安、直面する壁、それらを病院様と二人三脚でどう乗り越えてきたのか。伴走サポートのリアルをお伝えします。

病院様の熱量を最大化し、最後まで共に走り続けるキュレーター


──病院様からは「READYFORは何をサポートしてくれるのか」というご質問をよくいただきます。クラウドファンディングの際に、実際の伴走を担うのがキュレーターの皆さんですが、そもそも「キュレーター」とはどのような役割なのでしょうか?

鈴木: クラウドファンディングは、プロジェクト公開までの「準備期間」と、公開から終了までの「公開期間」という2段階に分かれますが、全期間を通して病院様に伴走するのがキュレーターです。

準備期間では、ページの作成や広報活動の準備をサポートします。単に作業を進めるだけでなく、「この取り組みを、誰にどう届けるのか」「支援者様とどんな関係性を築きたいのか」を一緒に考え抜き、ページや広報計画に落とし込んでいく役割を担っています。

公開後は、計画をベースにしながら状況を分析し、軌道修正を重ねていきます。施策の提案も行いますが、クラウドファンディングは決して楽な道のりばかりではないからこそ、病院様の不安に一番近くで寄り添い、背中を押し続けることもキュレーターの大事な役割です。目標達成に向けて伴走し続ける、プロジェクトマネージャーのような存在かもしれません。


──徹底的に伴走してくれると同時に、クラウドファンディングは「病院様ご自身の想いや動きが欠かせない」という部分も大きそうですね。

鈴木: クラウドファンディングの寄付は、実行者様に対する支援者様の「応援したい」という想いで集まるものなので、資金を集める主体はあくまで実行者様ご自身です。プラットフォーム側が集めるというよりは、実行者様が集められる状態を私たちが全力でサポートして最大化する。それが私たちの役割です。


──キュレーターは病院様の熱量を最大化させる存在ということですね。そうした「想いを外に広げるための攻めのサポート」の一方で、病院様のプロジェクトならではの留意点もあるのでしょうか?

鈴木: はい、キュレーターには「守りの役割」もあります。  

病院様自身の取り組みの重要性を伝えようとするあまり、つい「唯一の治療法」や「地域の最後の砦」といった、特別感を込めた表現を選びたくなってしまう場面があります。ですが、これらは医療広告ガイドライン的にも慎重な確認が必要になります。 

だからこそ第三者として介在し、医療広告ガイドラインの遵守はもちろん、クラウドファンディングを実施する上での様々なリスク観点から丁寧なアドバイスを行います。病院様に安心して挑戦していただけるようサポートすることも、キュレーターの大切な役割だと考えています。

プレッシャーに寄り添い、隠れた価値を言葉に


──日々キュレーターとして伴走する中で、それぞれが特に大事にしていることや意識している点は何ですか?

坂本: 病院内の関係者の方々のポジションや役割を踏まえたコミュニケーションを意識しています。病院内にはさまざまな立場の方がいらっしゃり、日常業務も求める役割もそれぞれ異なります。だからこそこちらから病院様にクラウドファンディング成功に向けたアクションを依頼をする際は、その方が動きやすいよう心がけています。

病院の担当者様と対話を重ねる中で、現場で取り組まれている皆様の想いの重さや責任の大きさをひしひしと感じる瞬間がありました。決して妥協できない挑戦だからこそ、「もっともっと深く寄り添わなければいけない」と感じました。

松原: 担当者の方は、本当に大きなものを背負っていらっしゃいますよね。

坂本: そうなんです。だからこそ、押し付けの依頼では絶対にダメだと思っていて。その方の負担を少しでも軽減し、前向きなお気持ちで関わっていただけるよう、院内での背景や役割を深く理解することを意識しています。全体ミーティングだけに頼らず、個別にお話を伺うなど、その方に合ったコミュニケーションを取れるように工夫しています。

松原: 私の場合、「資金調達以外でも、病院様とって財産が残るクラウドファンディングにする」ということを意識しています。

クラウドファンディングは、病院様の方向性を示すブランディングであり、大きなイベント(広報活動)になります。実際にクラウドファンディングを経て、「職員が明るくなった」「モチベーションが上がった」「集患に繋がった」「採用の応募が増えた」という成果を目の当たりにしてきました。せっかくたくさんの労力を割いてご挑戦いただくからこそ、その病院様が資金調達以外に抱えていらっしゃるお悩みや課題の、解決の一歩にもなるといいなと思っています。

また、皆さんが楽しんで取り組んでくださることが、明るい広報発信に繋がっていきますので、厳しくて挫けそうになる機会も多いからこそ、一番近くで前向きに応援して、「この頑張りは間違いないよ!」と常に隣で言える存在でありたいと思っています。


鈴木: 私自身は、「取り組みの価値がどこにあるかを客観的に見つめ、言語化すること」を強く意識して伴走しています。

病院様の課題にとどまらず、「地域社会の構造的な課題に対し、病院様がどう向き合い、どう貢献するのか」という大きな文脈に落とし込んで言語化していく。そうして整理した言葉に、「日々の患者さんへの温かいホスピタリティ」や「院内の雰囲気」「これから目指す病院像」などを重ね合わせながら、魅力的な発信ができるようサポートをしています。


──病院様ご自身が、自分たちの「取り組みの価値や尊さ」に気づいていないケースも多いのではないですか?

鈴木: 本当にそうなんです。現場の皆様にとっては「目の前の患者さんに向き合う毎日が当たり前」だからこそ、その価値になかなか気づかれないんですよね。でも第三者の目で見ると、「ものすごく尊くて価値のあることです!」とお伝えしたくなる場面ばかりです。

日々の現場に埋もれてしまいがちなその本当の価値をすくい上げて、社会へ届く言葉に翻訳していく。それこそが、私たちが伴走する一番の意義だと思っています。



難易度の高いテーマや院内体制。困難な壁も対話を重ねて糸口を見つける


──これまでの伴走の中で、大変だったことや、それをどう乗り越えたかについても教えてください。

松原: 本当に色々ありますが(笑)、「資金使途(集めたお金の使い道)や、テーマの打ち出し(必要性やメッセージの伝え方)が難しいケース」は特に難易度が高いですね。

ドライブシミュレーターやシニアカーを購入するプロジェクトを担当した際、とても意義深いのですが、一見すると「なぜ病院で買う必要があるのか?」と疑問を持たれやすかったり、高齢者の免許返納という非常に繊細なテーマを含むため、誤解が生まれるリスクがあると感じていました。


──たしかに、一見すると直感的に伝わりづらいテーマですね。

松原: そうなんです。「免許返納を促すためのものではないか」といった批判にも繋がりかねないので、地域の人が見た時に違和感がないか、齟齬なく意義を伝えていくのが本当に難しくて。でも「どこかに絶対に意義は見出せるはずだ」と病院様と対話を重ねていきました。

最終的には「危険運転を防ぎ、地域で安全な移動手段と暮らしを守るための環境整備」というテーマに辿り着き、丁寧な発信を重ねることで、目標金額を大きく超える達成に繋げることができました。

坂本: 私は「院内の推進体制の構築」で難しさを感じたことがあります。本来協力してほしい広報体制が組めなくなってしまったり、最終的に誰が責任を持つのかという「責任の所在」が曖昧だったり……。

キーマンとなる方のご多忙なども重なり、具体的な施策の検討が一時的に止まってしまう状況がありました。


──組織を巻き込むのは簡単ではないですよね。どのように突破したのですか?

坂本: やり取りを重ねる中で、プロジェクトに強い関心を持って丁寧なご意見をくださる職員の方がいらっしゃったんです。本来の窓口とは異なる部署の方でしたが、「この方となら一緒に対策を考えられるかもしれない」とお電話でお話ししてみました。

個別に「今できる範囲で何を進められるか」を相談する中で、その方が院内の各所へ丁寧に働きかけてくださり、巻き込みの輪が広がって無事に目標達成まで導くことができました。解決の糸口は現場のあらゆる場所に眠っていることを学びました。



鈴木: お二人が話された「資金使途」と「体制」は、病院様のクラウドファンディングを進める上で大事な要素ですよね。

大規模な病院様ほど、クラウドファンディングチームが院内で知られておらず、孤立してしまうこともあります。病院様全体にとってプラスになる挑戦なのに、院内に情報が行き届いていないと温度差が生まれてしまう。

本来は「文化祭の準備期間」みたいなワクワクした雰囲気になると理想ですし、院内を歩いていたら視界のどこかにクラウドファンディングの情報が入ってくる状態が一番良いなと思っています。そのために、まずは職員向けのお知らせや進捗共有などを通じて院内を巻き込んでいただくことは大切ですね。


松原: 院内の巻き込みだと、産科病棟のリニューアルに取り組まれた病院様のアプローチは見事でしたよね。達成率の更新ボードを各課でリレー形式にして回したり、職員食堂に寄付者様からの応援コメントを置いたり、日めくりカレンダーを設置したり。

鈴木: 確かに、院内から盛り上げようとして「協力してください!」と呼びかけるよりも、外から「クラウドファンディングを応援してます」「いつも地域医療を守ってくれてありがとう」と感謝や声をかけられて初めて、「あ、自分たちは価値のあることをやっているんだ」と職員のモチベーションが上がっていく側面もありますね。

外からの応援の声をいかに院内に届けて、自分たちの仕事の価値を再認識してもらえるか。そこをプロデュースしていくのも、キュレーターの大切な役割だなと感じています。




心に刻まれた「病院とキュレーターの深い絆」  



──数多くの医療プロジェクトを伴走する中で、印象深いプロジェクトや病院様の言葉はありますか?

坂本: 沖縄でのドクターカー導入プロジェクトが特に印象深いです。「ファンを増やしたい」という目的がとても明確で、地域住民の方々だけでなくメディアに向けても積極的に広報されるなど、広報施策のターゲット設計も洗練されているプロジェクトでした。

また、寄付者様への感謝メッセージも定型文を使わずに手書きで対応されたりと、寄付をしていただくことにどこまでも真摯に向き合われていました。クラウドファンディングプロジェクトリーダーの方も「一番汗をかくのはリーダーだ」というスタンスでチームも一体感があって。

プロジェクト終了後、現場の医師やスタッフの方から「坂本さんが励ましてくれたから走り抜けられた」と言っていただけたことは、キュレーターとしての宝物です。「皆さんの頑張りがあったからなのに…」と思いながらも、そのお言葉が日々の励みになっています。

チーム一体となって挑戦!クラウドファンディング実施病院の皆様とREADYFORキュレーターによる打ち合わせのひとコマ

松原: 私が忘れられないのは、思春期病棟の環境整備プロジェクトです。精神科や思春期病棟は、世間的な偏見やイメージを持たれやすく、病院様もちゃんとご支援が集まるのか、ご不安を抱えていらっしゃいました。

そんな中で実際に病院様へ訪問し、現場の看護部長さんと対話を重ねました。その時に看護部長さんが「いろんな事情を抱えた子どもたちに罪はない。応援される経験をさせてあげたい」と熱く語ってくださって。実際の思春期病棟の子供たちと、一般的なイメージの乖離を埋めるように「どうしてこの支援が必要なのか」「どのような子供たちのためになる支援なのか」がしっかり伝わるよう、丁寧にページへまとめていきました。

クラウドファンディングを通して「子供たちの力になりたい」という温かい想いと資金が集まってきて、最終的に子どもたちから「自分たちを応援してくれる人がこんなにいるんだ」という声が生まれた時は胸が熱くなりました。クラウドファンディングを通じて子どもたちを勇気づける一端を担えたことがとても嬉しく、心に残っているプロジェクトです。

鈴木: 深く心に残っているのは、アトピー性皮膚炎の新薬開発を目指す、大学医学部の基礎研究のプロジェクトですね。命に直接関わる病気ではなくても、当事者の方やケアするご家族は日々辛さを抱えていらっしゃいます。そうした方々の願いを結集させたプロジェクトでした。


──このプロジェクトは、個人寄付が難しい領域で1,000人近い方からの想いが集まったのも特徴的でしたね。何かそのあたりの仕掛けもされたのでしょうか?

鈴木:医療・研究系のプロジェクトは一般的には個人寄付を集める難易度が高いのですが、2,000円から参加しやすいリターン設計を行い、最終的に1,000人近い寄付者様から目標の2倍以上となる2,000万円以上の資金が集まるプロジェクトになりました。

振り返りの時に担当の先生が仰った、「クラウドファンディングは人生の掘り起こしである」という言葉が深く心に残っています。「発信すれば自然と知ってもらえる」という捉え方ではなく、これまでご自身が出会ってきた大切な方々へ、感謝と敬意を込めて地道に想いを伝えておられました。先生の真摯な背中から教わったことは本当に多く、先生と共に、アトピー性皮膚炎の当事者の方が気軽に未来に想いを託せる場を共に創り上げられたことは、非常に感慨深かったですね。



あなたにとってキュレーターとは?


──最後に、皆さんにとって「キュレーターとは」何でしょう?

鈴木: 「実行者様が気づいていないところも含めて、ポテンシャルや魅力を徹底的に引き出す人」だと思っています。準備期間から公開終了する最後の1日まで、あらゆる角度からスポットライトを当てる存在でありたいですね。

その取り組みが、地域とってどのような価値があるのか、徹底的に言語化します。これなら自信を持って世の中に発信できるという言葉、そして前向きな気持ちをつくっていきます。

そのうえで、プロジェクトの表に立つメンバーだけに留まらず、現場で働く医療従事者の方をはじめ、事務員さんや給食係の方、警備員さんなど、関わるすべての方が主役になれるようなプロデュースを意識しています。例えば、日頃の繋がりを活かして地域のお菓子屋さんや居酒屋さんにチラシを置いていただく、というようなアクションを後押しすることもあります。

一人一人のつながりから「地域のステークホルダー」を浮き彫りにし、地域医療を考える仲間としてつなぎ直す。それこそが、私たちが伴走する醍醐味だと感じています。


坂本: 「実行者様の想いを一緒に言語化する人」でありたいです。

プロジェクトページの文面はもちろん、公開後の発信内容も含めて、伝えたい想いが届くようにプロジェクトやターゲットに合わせてメッセージをチューニングする。

病院様ごとに伝えたいことも、届けるべき相手、響く言葉も全く違うからこそ、「貴院だからこそ、こう伝えましょう」と提案し、一番近くで寄り添いながら一緒に形にしていく存在であり続けたいです。


松原: 「病院と地域・患者様をつなぐ架け橋」だと思っています。

病院様からは、「本当に寄付が集まるのでしょうか…」と不安の声をいただくことも少なくありません。 ですが実は、患者さんは想像以上に皆様へ深い感謝を抱いていらっしゃいます。ただ日常の中では、その感謝や想いを伝える機会がなかなかありません。同様に、病院様の「もっと良い医療を提供したい」という想いも、患者さんへ十分に伝わりきっていないのが実情です。

時には地域の方や患者さんの立場に立ち、時には病院様の立場に立って、それぞれの想いを繋ぎ合わせ、クラウドファンディングを通じてお互いの距離をグッと縮められる。手を取り合える状態を作る架け橋でありたいなと思っています。


────キュレーターという第三者が伴走するからこそ、病院様自身も気づいていない魅力や挑戦が形になっていくのですね。みなさんそれぞれが持つキュレーターとしてのポリシーや具体的な取り組みが伝わるお話でした。本日はありがとうございました。

鈴木 峻
リードキュレーター / 准認定ファンドレイザー

明治大学 情報コミュニケーション学部卒。新卒で鉄道系広告代理店に入社。ショッピングセンターや鉄道関連施設などの年間販促企画の営業、企画、実施や、鉄道沿線のJリーグクラブとのコラボ企画などにも従事。2022年にREADYFORへ入社後は、ソーシャル領域のNPOや公益法人、医療機関、大学研究機関などのプロジェクトを幅広く担当。これまで約100件のプロジェクトを通じて累計10億の資金調達をサポート。

坂本 真奈
キュレーター / 准認定ファンドレイザー

慶應義塾大学文学部卒業後、ブランディング会社へ入社。営業プロデューサーとして、さまざまな業界の大手20社以上の採用ブランディング領域とコーポレートブランディング領域を担当。「らしさ」を表現して、挑戦する人の背中を後押ししたいという想いからREADYFORに入社。これまで約100件のプロジェクトを通じて累計10億の資金調達をサポート。 

松原 未恵
キュレーター

青山学院大学卒業後、人材業界にて営業/カスタマーサクセスとして、大手からベンチャー企業まで様々な業界の採用成功まで伴走。「目指すゴールまで伴走する」ことへ想いを強くしつつ、社会性の高い事業領域へ挑戦する姿に強く惹かれREADYFORへ参画。現在は医療分野の担当として、クリニックから大病院まで数多く医療機関プロジェクトに伴走。約60件のプロジェクトを通じて累計約7億円の資金調達をサポート。

(聞き手:READYFOR株式会社 医療部門 責任者 多田絵梨香)

READYFORサプリ編集部

READYFORサプリ編集部は、「みんなの想いを集め、社会を良くするお金の流れをつくる」ことを目指し、資金調達や寄付集めをサポートする情報を発信します。クラウドファンディングやファンドレイジング成功に向けたノウハウをお伝えする勉強会やセミナーも開催しています。実行者インタビューやプロジェクトの裏側を伝える記事などをはじめ、想いを形にし、資金調達を成功に導くための様々な情報をお届けします。

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